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コラム第258話:経営者がやりたい開発と社員が実行する開発が食い違う理由とは?


ある企業を初めて訪問し、最初にこれまでに開発をやったことがあるかどうかを質問したときのことです。

技術者が答えます。
「開発ならやっていますよ。」
「どんな開発を?」と聞くと、「営業から言われたものを」と答えるので、そちらの方を向くと、営業が答えます。
「お客さんからのコストに対する要求が厳しく、それを技術に伝えています。」

つまり、お客さんからのコスト要求を営業が聞き、それを技術に伝え、技術は、その要求コストにできるだけ近づくように、製品の設計、試作、評価を、そして、工程の設計、試作条件出し、評価(検査)立上げを行っているとの回答です。

しかし、社長は不満を持っています。
「今のやり方では少しも儲からない。経営が苦しい。何とかしたい。もっと儲かる仕事ができるように開発してほしい。」と。

これに対して営業は答えます。
「技術アピールはしていますが、お客さんからのコスト要求が厳しく、安くないととても使ってもらえません。」
技術は答えます。
「我々は営業のコスト要望に必死に対応しています。その対応だけで既に限界であり、これ以上のことはできません。」

社長は反論します。
「現状では我が社に明るい未来は無い。もっと儲かる製品をやれるように、それに繋がる技術を開発したい。」

技術は答えます。
「どういったものを開発するのか?それがわかれば、我々にできるものであれば努力はします。」
営業は答えます。
「技術が開発したものをアピールはしますよ。」

この企業では、ずっとこうした議論が繰り返され、その結果、社長が求めるような開発が実行されることは無く、お客さんのコスト要求にひたすら応え続ける日々が続いていました。

ここまでわかったところで、まず、この企業にお伝えしたこと。それは、設計・試作・評価=開発では無い、ということです。要求に応じて、設計・試作・評価することが開発では無いのです。

設計・試作・評価は、開発の工程の一部ではあっても、決して設計・試作・評価=開発ではありません。開発には、もっと別の工程があります。そればかりか、その別の工程の方が、より重要であり、より力を入れるべき工程です。

開発において、最も重要な工程。それは、何を開発するのかを考え決める工程です。

「何を開発するのか?それがわかれば開発する」では無いのです。
「開発されれば、アピールします」では無いのです。

何を開発するのかを考え決めること、これ自体が開発の最も重要な工程であり、開発の仕事なのです。これができていないということは、開発などできていないということなのです。なぜなら、開発とは、お客さんを創り新しく収益を得ること、だからです。新しい製品や技術を開発し、それによって新しいお客さんを獲得する。あるいは、今のお客さんに新しい製品や技術を提供し、新たに収益を得る。これが開発の目的です。先の社長の要望自体は、極めて正しいのです。

お客さんを創り新しく収益を得ること=要求通りに設計・試作・評価することではないはずです。お客さんを創り新しく収益を得るためには、設計・試作・評価よりも、何を開発するのかを考え決めること、これが極めて重要なのです。

何を開発するのかを考え決めることを自社の重要な仕事と位置づけ、人と時間をかけて真剣に取り組んで初めて開発ができるようになっていきます。

「我々のような小さな企業に?」
よく返ってくる言葉ですが、小さく始めれば良いだけのことです。結局、始めるどうか、それだけの違いです。

御社は、何を開発するのかを考え決めること、ここに人と時間をかけていますか?