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コラム第255話:開発が失敗で終わる企業と成功するまで何度でも挑戦する企業の違い


「話が止まってしまいました・・・」
しばらく前にあった、ある開発者からの報告です。

進めていた開発が、顧客企業の意向が変わり進まなくなったということですが、要点だけを書くと、次のような話です。

  • 顧客企業で最も熱心だった担当者に人事異動があり、担当と体制が変わってしまった
  • 引き継がれてはいたが、以前のような勢いが無くなった
  • 懸命に働きかけてきたが、ついに、ほとんど話が前に進まなくなった

いつもは元気な開発者が、ひどく落ち込んだ様子で報告してくれました。この開発者に原因があるのではなく、いわば不可抗力ではあるのですが、止まってしまった現実は変わりません。この開発者もそれがよく分かっていて、止まってしまった現実に対して、もう立ち直れないといった雰囲気でした。

ところが、こちらから投げかけた、ある質問をきっかけに、この開発者は立ち直りました。ハッと我に返り、しばらくして再び前へと進み始めました。その結果、先日、次のようなうれしい報告がありました。

「先生、新たなお客さんが見つかりました!」
いつもの元気いっぱいの笑顔で、「今度は必ず」と、強い自信を示してくれました。

今回のケースのように、体制の変化や環境の変化によって、開発を進めている途中で顧客企業の意向が変わってしまうことは、残念ながらよくあることです。もちろん、途中でこういった事態に陥らないように、事前に念入りに調整したり、リスク回避策を取ったりするわけですが、それでも、完全に防ぐことはできません。顧客を完全にコントロールすることはできないからです。

ただ、もし、顧客企業の意向が変わったからと言って、開発が完全に停止し失敗として終わってしまうとしたら、その開発は、スタート時点からどこかおかしかったと言わざるを得ません。

確かに、ある特定の企業の意向が変わり、動きが止まった後では、その企業を再び動かすのは容易ではありません。しかし、それで自社の開発への取り組みが完全に終わってしまうとしたら、その取り組みは、元々どこかおかしい取り組みです。

どこがおかしいのかと言うと、その開発に対して、自社の意志が無いということです。

開発期間が長くなると、どうしてもお客さん側にも変化が生じます。それが自社にとって悪い方向に変化することも当然あります。ところが、それだけで開発が完全に終わってしまうのは、そもそもその開発に対して、自社に意志が無いということです。なぜ、我が社は、この開発をやるのか?3年後、5年後、10年後を見越して、その開発に取り組む意志、別の言葉で言えば、我が社がどういう方向に向かって進んでいくのかという「方向性」が存在しないということなのです。

たとえ、顧客企業の意向が変わってしまい、開発が途中で立ち消えになったとしても、失敗で終わらず最後までやり抜き成功する企業には、意志があり、自社が進んでいく方向性があります。一つ一つの開発は、この方向性に沿ってやっています。全体の方向感の中で、その中の一つとして一つ一つの開発を位置付け進めています。そのため、進めている開発において、途中で顧客企業の意向が変わったとしても開発への取り組み全体が完全に終わることはありません。個別顧客企業の個別案件は止まっても、目指す方向に向かって、開発そのものは着実に進めていくべきものだからです。

「顧客企業の要望で始めたのに、途中で顧客の意向が変わってしまって・・・」
「折角協力したのに・・・」
「顧客企業に振り回されてばかり・・・」

ときどき、こういった話を耳にしますが、これらは、自社に意志が無い、開発に取り組む上での方向感が無い典型的なパターンです。

冒頭の開発者に、こちらから投げかけたのは、「方向性が間違っていたのですか?」という質問です。

この方は、気づきます。「自分たちの方向性は間違っていない。この顧客企業向けの開発は、顧客の意向が変わり止まってしまったが、この開発自体の方向性は合っている。我々の考えは間違っていない」ということに。

この開発者は、このことに気づいた結果、元気を取り戻し、前へと進み始めました。そして、しばらくして次のお客さんを見つけ、次へと進み始めています。実は、比較的すぐに次のお客さんが見つかったのは、元々、方向性に沿って様々なお客さんの可能性を探り続けていたからなのですが、これも自社に意志があり、方向性を持っていたからできたことです。

自社に意志、方向性があれば、顧客企業の変化で、開発への取り組み自体が終わってしまうことは、本来、無いことなのです。顧客企業に振り回されるのは、自社に意志と方向性が無いから起こることなのです。

御社には、自社の意志、3年後、5年後、10年後、自社が向かう方向性がありますか?