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コラム第248話:自社の技術が採用される企業と採用されない企業の技術開発に対する目的意識の違い


「この製品は、A社に、こちらの製品は、B社に。それから、こちらとこちらの製品は、C社に採用されています。」

先日、機械加工をやっているある企業を訪問したときのことです。その社長が、自社の加工技術がどういった製品に採用されているのか、ガラスケースの中の製品見本を指さしながら、一つ一つ説明してくれました。これで終わりかな、と思っていると、今度は隣のガラスケースに移って、さらにいくつかの製品の説明が続きます。

「ずいぶんと多いですね。さぞ技術的に優れているのでしょうね?」と感心しながら訪ねてみると、
「いえいえ。当社の技術などたいしたことはありません。先生にお話しできるような特別な技術は無いですよ。」とずいぶんと謙遜された言葉が返ってきます。

「でも、この製品は、苦労されたのではないですか?」とある製品に水を向けてみると、
「よく分かりますね。それは、本当に苦労しました。」最初、驚いたように目を見開いたかと思うと、その後、少し口角を上げながらうれしそうな表情に変わります。

すかさず、「詳しくお聞きしたいですね。」と聞いてみます。
すると、よく聞いてくれましたとばかりに、「実は・・・」と詳しく話してくれました。とても感心する内容で、素晴らしい技術開発力を持つ企業であり、それを創り上げている立派な社長であることがわかりました。そして、その後の話も大いに盛り上がりました。

一方で、同じように技術の説明をしてくれるのですが、聞いている内に、だんだんと残念な気持ちになる企業があります。同じように社長が熱心に説明してくれるのですが、その内容が技術的内容に終始してしまうのです。

ここまでできるのは自社だけ、他社には真似できないなど、とにかく技術の高さを強くアピールしてきます。話を聞いていると確かに凄そうな技術ではあります。あるのですが、「どんな製品につかわれているのですか?」と聞くと、とたんに雲行きがおかしくなってきます。これは今アピール中で・・・こっちは値段が・・・こちらは、評価中で・・・と、凄い技術のわりに採用されていません。最近の技術開発だけならまだこれから、とも考えられるのですが、ずいぶん長いこと採用されていない技術があります。そして、どう考えても技術開発の多さに比べて、採用されている量が少ないのです。採用されている技術でも、それほど立派な技術をそんなことに・・・と残念に思ってしまう使い方をしています。

冒頭の企業のような例がある一方で、こういった例の企業が多いのも事実です。

前者と後者の違い。それは、一言で言うと、技術開発力の違いです。

誤解しないで欲しいのですが、ここで言う技術開発力とは、単に技術の開発力の違いではありません。もっと総合的な技術開発力の違い、いわば真の技術開発力の違いです。前者と後者の企業を技術力の視点で単純に話を聞けば、後者の方が技術開発力が高いように聞こえます。しかし、そうではありません。実際には、前者の企業の方が圧倒的に、技術開発力が高いのです。

真の技術開発力を持つために必要なのは、技術力だけではありません。どんな技術を、そしてそれをどのように開発するのか、これらも含めて技術開発力です。前者と後者の企業の例では、特にどんな技術を開発するのか、ここを決める力に決定的な差があります。そのため、技術開発を開始する時点で既に両者には大きな差が付いてしまっています。

そして、この差を生んでいる根本には、技術開発に対する、ある姿勢があります。技術開発に対する姿勢の違いが、両者の差を生んでいます。それが、会話の中に如実に表れています。技術開発に対する姿勢の違いが、両者の会話の中にきれいに表れているのです。

技術開発に対する両者の姿勢の違い。

それは、「誰のために技術開発しているのか?」という技術開発の目的意識の違いです。

後者の企業は、自社のために技術開発をしています。自分たちの技術を伸ばすため、自社の技術を差別化するため、自分たちにとって魅力的な技術にするために、技術開発をしています。そして、どうだ、凄いだろう!とアピールしているのです。きっと凄いのでしょうけど、お客さんからは欲しく無いという現実を突きつけられているのです。ところが、目的意識が違うので、そこに気づくことができません。

一方で、前者の企業は、顧客企業のために技術開発をしています。お客さんのためにお客さんが欲しいものを提供しています。多くの場合、それは技術そのものではありません。技術では無く、お客さんが欲しいものを提供しているのです。だから、次々と採用されています。

簡単なことのようですが、これは非常に力が要ることです。どんな力が要るのかと言うと、お客さんが欲しいものを技術に翻訳する力が求められます。お客さんが欲しいものを技術に翻訳し、どんな技術を開発すべきかを決め、しかもそれをタイムリーに開発提供できなければなりません。それが真の技術開発力です。

冒頭の企業には、この真の技術開発力があるのです。そこには、必ずしも後者の企業のような突出した技術は必要ありません。逆に、突出した技術があっても、必要とされない技術ばかりでは、技術開発力があるとは言えないのです。

御社には、真の技術開発力がありますか?
誰のために、技術開発をしていますか?