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コラム第243話:開発型企業にあって、技術が強みの自称技術系企業に欠けている経営の視点とは?


先日、ある経営者から開発中の案件があるので聞いて欲しいと頼まれて話を伺った時のことです。

「実は、今度、大学と一緒に開発することになりまして。一緒にやるのは、有名な先生なのですよ。すごい技術をお持ちで、その技術を使って今度の我が社の製品を開発するのです。」

この後、その先生の経歴と、技術の詳細説明が長く続きました。興味深い話ではあったのですが、一通り説明が終わったところで、気になったことを質問してみました。

「ところで、その技術は、魔の川を渡り終えた技術ですか?」

「え? マ、ノ、カワ? 何ですか、それ?」

このケースのように、開発のご支援をしていて、大学との取り組みが絡むことがあります。大学は、上手く連携できればその力が大いに役に立ちます。ですので、大学は積極的に活用すべきです。一方で、大学との取り組みでは、考えておくべきことや知っておくべきことがたくさんあります。組織の違い、目的の違い、利害の違い、取り組みの違いなど、様々な違いを考慮した上で進める必要があります。ところが、これを知らずに安易に進めてしまう企業が極めて多いのが現実です。当然ながら、知らずに進めては、様々な失敗を引き起こします。そのため、上手くいかなくなる事例が後を絶たないのです。大学だけが喜ぶ結果になったり、大学も企業も喜べない結果になってしまっています。

大学との取り組みにおいて、まず、理解しなければならないことは、大学は研究機関であり、企業は事業体である、ということです。何を当たり前のことを?と思われる方もいるかもしれませんが、ここが決定的に違うのです。さらに補足すると、大学との取り組みでは、大学は研究をやるのに対して、企業は事業化するための開発をやるということです。そして、ここが最も大切なことですが、研究と開発は違う、ということです。

ところが、この研究と開発が違うということを理解できている経営者が、極めて少ないのが現実です。これが、大学との取り組みを失敗させる原因になっているのです。

何が違うの?
なんとなく違いは分かるけど、研究と開発は連続したもので、境界線は無いのでは?

こういった理解不足の状態では、まず、大学との取り組みを成果に結び付けることはできません。

研究と開発の違い、これは学問で言うと「技術経営」で取り扱う分野です。技術経営が分かっていればできる、というほど単純ではありませんが、少なくとも、技術経営の基本的な部分として魔の川くらいは知っておかなければなりません。

冒頭の経営者には、最初に理解しておくべきことを少しお伝えしました。すると、まだまだ理解が足りていない段階で、「先生、この技術経営を技術社員に学ばせるべきでしょうか?」と質問されました。この方は、ご自身よりも一般社員に学ばせようと考えたのです。残念ながら、まだ意識が変わっていないご様子なので、さらにご説明することになりました。

技術経営とは、その名前の通り、「経営」です。当たり前のことですが、これを理解しなければならないのは、また、理解できるのは、経営者です。経営者は学ばず、技術系役員ならともかく一般社員に学ばせても効果は出ません。一般社員に経営はできないからです。技術を成果に結びつけるためには、経営者自身が技術を経営する覚悟が必須なのです。

「我が社は技術の会社だ」と言うのであれば、当然、経営者が、技術を経営できていなければなりません。経営者が技術の経営をわかっていない会社では、技術を事業に活かすことはできないのです。

御社は、技術を経営できていますか?
技術者や大学に頼って、経営を丸投げしてはいませんか?