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コラム第216話:開発が遅れる、人を増やしても間に合わない本当の原因


「時間ばかりかかって、どんどん遅れています。人も投入しているのですが、全然足りません。なんとかしないといけないのですが・・・」
先日、ご相談を受けたある社長が抱えていた課題です。

状況をもう少しお聞きすると、次のように話してくれました。
競合他社が新しく開発してきた製品が評判になっている。このままでは負けてしまう。慌てて対抗する製品の開発に着手する。ところが、一向にまともな開発品が出来上がらない。そうしているうちに、他社は売り上げを伸ばし始める。焦って、人を増やす。しかし、それでも開発品の完成の目途が立たない。日々、焦りをつのらせている。
このような状況でした。

こんな状況に対して、他社はできているのに、人も投入して時間もかけているのに、なぜ、自社にはできないのか?と、社長は、自社の技術者への不満を高めていました。そして、他社と比べて、社員の能力が低い、行動スピードが遅い、努力が足りない、と不信感をつのらせていたのです。さらには、あいつはこうだ、彼はこうだと、社員一人一人の問題点を指摘し始め、その話が長く続きました。

ようやく長い話が終わったところで、その技術開発内容について少し突っ込んで聞いてみました。すると、その開発内容とやり方は、「非常に難易度が高い」そう直感できるものでした。

その後、社員の方を見てわかったことですが、この会社の社員は、決して能力は低くありませんでした。逆に、「かなり高いな」と感じたほどです。では、怠けていたのかと言うと、それも違います。むしろ、必死にやっていて、そのせいで疲れ切っていたほどです。それでも経営者の急ぎたいという思い、他社との競争を意識して、なんとか速くしようと懸命にがんばっていました。それでもできなかったのです。

なぜ、このような悲劇が起こったのでしょうか?

それは、経営者が開発にかかる経営資源を読めていない、ことに原因があります。

この社長には、他社の新製品に対して、いついつまでに、対抗できるレベルの新製品を開発したいというイメージ、目標があります。そして、それを社員に求めます。社員はその求めに精一杯応えようとします。しかし、できません。このとき、経営者は原因を社員に求めてしまいます。しかし、多くの場合、そうではありません。この流れの中で、決定的に欠けていることがあります。それが、目標に対して開発内容を決めた時に、経営者がその開発にかかる経営資源を見積もっていない、ということです。

こう言うと、「そんなことは無い、社員に考えさせ、社員はできると言った」とよく反論されます。しかし、社員には経営者への遠慮があります。忖度があります。他社はできているという負い目があります。また、後ろ向きなことは言いたくありません。さらには、経営陣とコミュニケーションが取りづらい面があります。必然的に無理をします。社員のレベルが低ければ、「できません」と開き直られるでしょう。しかし、冒頭の企業を含め、日本の企業の社員は優秀です。できませんとは言いたくないものなのです。

経営者は、そこまで見越して、開発にかかる経営資源を冷静に見定めなければなりません。そのために、開発内容、技術内容をある程度理解しなければなりません。その上で、目標に間に合わせるにはどうしたら良いか、きちんと考えることです。多くの場合、開発内容を変えなければならないという答えが出てくるはずです。これをやらずに、開発に突っ込むから、上記の悲劇が起こるのです。

冒頭の企業では、その後、開発内容そのものをできる開発に見直しました。

御社では、開発にかかる経営資源を開発前にきちんと見積もっていますか?
開発後には、見積りと結果の検証をして、見積り精度を高める努力をしていますか?