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コラム第213話:自前主義で独占を図る企業が結局ビジネスで成功できない理由


「先生、すごい特許が取れそうです。ちょっと聞いてくれませんか?」
数年前に、ある経営者から声をかけられました。

詳しくお聞きすると、確かに特許が取れそうな内容です。経営者の方は、得意気に言います。
「どうです?すごいでしょう?」

これには、こう答えます。
「残念ながら、その特許を取るとビジネスが逃げていきますよ。」

「え?」
驚きの表情を浮かべた後、顔色が変わって必死の反論が返ってきます。
「しかし、自分たちだけでやった技術です。効果も出ています。特許事務所もこれは特許が取れると太鼓判を押してくれています。いま特許を取れば、この技術を独占できます。当社にとって、またとないチャンスなのですよ。」

すっかり、特許に夢中になっています。特許を出願する以外の選択肢は頭に無いと言わんばかりです。しかし、それなら、なぜ、当社に相談したのでしょう?そう疑問がわきますが、それは置いておいて、特許を出すべきではないとの結論に至った理由をご説明します。

何もすべての特許は取るべきでなないと言っているのではありません。むしろその逆で、取るべきものは取るべきです。ただし、取るべきものです。取れるからといって、何でも取るのは間違いです。

特許の仕組みをわかっていて、上手く特許を利用している企業は、このことが当然わかっています。わかっているので、特許が取れる案件でも、あえて出願しないことは頻繁にあります。逆に、一見特許が取れなさそうな案件でも、あの手この手で特許にすることもしています。決して、特許事務所の言いなりでは動きません。

特許が取れる=特許を取る、こう考えている企業は、特許は取るべきものを取るということがわかっていないので、取れるとなれば、とにかく取ろうとします。特許事務所から特許になりますよ、と言われれば、ほぼ自動的に出願します。

この特許を戦略的に取る企業と、盲目的に取る企業との違い。そこには、ビジネスを意識しているかどうかの違いがあります。

そもそも、ビジネスの全体像、全体の戦略があって初めて、どこにどう特許を取るかという特許戦略が成り立ちます。ビジネスのことを強く意識していれば、特許を取れる=特許を取るとは、絶対になりません。それが、特許を取れる=特許を取るとなるのは、技術のことだけを考えてビジネスのことを意識していない証拠です。

冒頭の企業のように、取れるとなったら大喜びで直ぐに取る企業は、ビジネスを考えていません。考えていたとしても、この特許を取ればビジネスを独占できるというバラ色の理想のビジネスを頭の中に思い描いています。現実の厳しいビジネスの世界では無く、ふわふわとした、お花畑の中に居るのです。

そんな状態で特許を取っても、ビジネスに成功できるはずがありません。少なくとも、ビジネスのことを考えていたら、ビジネスのことがわかっていたら、次のことを必ず意識するはずです。

ビジネスは、一社だけでは完結しない

お客さんがいて、仕入れ先があって、関係企業がいて初めてビジネスは成立します。お客さんに買ってもらわないと、仕入れ先の協力や関係企業の協力が無いと、成立しません。

どうすれば、お客さんが買ってくれるのか、仕入れ先が快く協力してくれるのか、関係企業から必要な情報が得られるのか、協力関係を築くことが必須です。そして、協力してもらうためには、彼らの利益をまず考えなければならないのです。

彼らの利益を満たしつつ、自社が利益を得るためにはどうしたら良いのか?

こう考えて行動する企業は、多大な協力が得られ、その開発スピードは、協力企業の数だけ速まり、結果的に大きな利益が得られます。

逆に、自社の利益だけを追求して独占しようとすると、何でも自前で開発し、特許化して権利化し、これはオレのものだと武装することをします。しかし、そんなものは、怖くて誰も使いたくありません。得するのは特許を持つ企業だけで自社は損をすると感じるので、みんな逃げていきます。結局、特許をとった企業は孤立し、ビジネスが成立できなくなります。どんなに時間をかけた優れた技術であっても、そこから利益を得ることはできません。なぜなら、一社だけではビジネスは成立しないからです。

御社は、自社の利益を考える前に、お客さんの利益、協力企業の利益を考えていますか?
独り勝ちという妄想を抱いてはいませんか?