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コラム第211話:開発で儲けている中小企業の社長が持つ、儲かる開発を選ぶ嗅覚


「こういう考え方があったのですね。なるほど。これなら我が社にもできそうです・・・もっと早く聞いておくべきでした。」
開発テーマを決める際の考え方についてご説明したときの、あるご支援中の社長の反応です。

ご支援を始める前、この社長の頭の中には、既にある開発テーマがありました。詳しくは書けませんが、この企業の競合他社がある開発に成功したそうです。大手企業に採用され、生産も順調とのこと。その開発を見て社長はこう思いました。「これならうちにもできる。」と。

誤解しないで欲しいので補足しますが、この社長は決して競合のコピーをしようとしたのではありません。競合とは別の、自社の製造技術を使ってやろうと考えていました。自社の技術を使えば十分同じことができる、そう踏んだのです。

こう考えた社長は、周囲の役員に相談します。「これならできるのではないか?」そう問いかけます。すると、「確かにできそうです。」と賛同が得られます。

次に、技術者に問いかけます。「これなら我々でもできるのではないか?」と。すると、「できます。」とうれしい返事が返ってきます。

社長は自信を深めます。「よし、やるぞ」と。しかし、それでもどこか少し不安だったのでしょう。「こういうのを考えているのですが・・・」と当社に相談されたというのが、この社長との出会いでした。

開発しようとしている内容をさらに詳しくお聞きしていくと、なるほど、皆が賛同するだけあって、開発できそうというか、ほぼ確実に開発できる内容であることがわかりました。社長は、さらに、できる理由、競合との技術の違いをこれでもかと熱心に説明します。すべてを話し終えた後、最後に「どうでしょうか?」と問いかけてきました。

このとき、社長の表情からは、自信とどこか安堵感のようなものが感じ取れました。おそらく、専門家にも聞いてもらって、これで大丈夫と思ったのでしょう。それが伝わってきたので、ちょっと、回答しづらくなったのですが・・・この方のためにあえてはっきり申し上げました。

「できるとは思いますが、儲からないですよ。少なくとも開発するだけのメリットは感じられません。」・・・社長は絶句していました。

確かにこの社長が考えていた製造技術は他社とは違うものでした。しかし、ここが大事な点ですが、結果は同じだったのです。結果、すなわち、開発、製造の結果得られる製品は、全く同じでした。他社と同じ製品を別のやり方にする内容だったのです。しかも、他社よりも製造コストのかからない方法ではありません。むしろ、より手間がかかるのではと思える方法です。

こう言うと、この社長は、こう反論したはずです。「いや、通常は余計に手間がかかるのを同等レベルにできるのが当社の技術です。」と。

しかし、それでも結果は同じです。出来上がる製品は同じなのです。同じである以上、開発に成功しても、先行他社とは価格競争にしかなりません。価格以外に差別化できないのです。しかも他社が先行しているのですから、新たに参入するには、他社よりも価格を下げるしかありません。

自社の製造技術が他社よりも低コストでできる製法であれば別ですが、この企業のように同等レベルであれば、あとは、利益を減らす争いになります。そうなると、体力勝負になって消耗戦になります。体力のある大企業ならともかく中小企業が取る戦略ではありません。

「それでも、市場全体が伸びていけば。」社長は食い下がります。社長には、「明らかにこの市場は伸びる」という読みがありました。しかし、ここにも落とし穴があります。明らかに市場が伸びる=儲かるという発想ですが、ここには重大な欠陥があります。それは、皆がそう考える、ということです。すなわち、競合が皆参入してきて激しい価格競争になる、ということです。

儲かる開発をするためには、皆と同じことはしないことです。やり方では無く、結果を他社とは変えることです。

誤解しないで欲しいのですが、こう言うと、直ぐ難しい新技術を使った画期的な製品を開発しようと考える人がいます。しかし、それは成功率が低すぎる選択です。チャレンジ精神は買いますが、難易度が高すぎます。そうではなく、登山に例えるなら、皆と同じ山を登ったり、皆が登れない険しい難しい山に登るのではなく、皆が登らないけども比較的登りやすい山を選ぶことです。そんな山を見つけ出すことこそが最も重要なのです。

開発で儲けている企業の社長には、この山を見つける嗅覚があります。その多くは、経験や勘です。しかし、経験や勘に頼らなくても、見つけ出すための考え方があります。冒頭の企業には、この考え方を伝授しました。そのときの社長の反応が、冒頭のセリフです。考え方を変えるだけで見える世界が変わるのです。

御社は、儲かる開発を選んでいますか?
自ら、過当競争を選んでいませんか?