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コラム第209話:付加価値を上げようと奮闘する製造業が罹患する深刻な二つの病


「付加価値を上げようと頑張っているのですが・・・」

利益が赤字と黒字の間を行ったり来たり。利益を出すために何とか自社の付加価値を上げようと必死に頑張っているのに少しも伸びてこない。ある経営者からそんな悩みを打ち明けられました。

付加価値を上げるために、これまでどんな活動をしてきたのか聞いてみると、二つの活動を説明してくれました。

一つは、社内でやる工程を増やすことです。詳しくは書けませんが、従来は切削加工だけをやっていたのが、後工程の組立工程までやるようにしたといった内容です。切削加工だけから、切削加工+組立と二つの工程を社内でやることによって、自社の付加価値を上げたとの説明です。

もう一つは、引き合いがあったら、どんなに安い仕事でも請け負うようにしてきたとの説明です。安い仕事でも数を増やせば設備の稼働率が上がって価格を下げられるので成立できるとの考えのもと、受注してきたとの説明です。そのため、現場は多忙を極めていました。しかし、利益はと言うと、冒頭のような状態です。

話がそれないように繰り返しますが、この二つは、付加価値をあげるためにどんな活動をしてきたのか?という質問への回答です。ご本人は、この二つの活動で付加価値が上がり利益が増えると、いたって真面目に考えています。利益が増えないのは、まだ努力が足りないのが原因と考え、ますます社内でやる工程を増やし、あらゆる引き合いを受注しようと頑張っています。しかし、結果は一向に伸びません。一方で、現場は多忙を極め、限界を迎えています。頑張れば頑張るほど、薄利多忙を極めており、完全に悪循環に陥っています。

厳しいようですが、これは当然の結果です。なぜなら、工程を増やすことや稼働率を上げることと、付加価値を上げることは、直接関係ないからです。

まず、二つ目のどんな安い仕事でも請け負う行為。これが付加価値を上げないことは、説明するまでも無いでしょう。すべての引き合いを取ろうとして、自社を安売りしているのですから、付加価値を上げるどころか、反対に下げる行為です。当然、利益は伸びません。稼働率が伸びれば、コストは下がるかもしれませんが、その分というかそれ以上に価格を下げるのですから、とても利益が伸びるような状態にはなりません。それに対して、現場への負荷は高く、極めて費用対効果の悪い施策です。増やせば増やすほど現場が疲弊し、利益を伸ばす活力までもが奪われていきます。

それでも、価格を下げるためには、設備の稼働率を上げなければならない・・・これは、典型的な稼働率病です。稼ぐ手段である設備がいつしか主役となり、設備の稼働率を上げることが目的化し、稼働率を上げるために安い仕事でも取るという、あべこべなことをやるようになってしまう病気です。本来、稼働率が低いのが経営上の問題であるのであれば、設備を廃棄することです。それが正しい対処です。

もう一つの工程を増やすという行為。これは、付加価値を上げるための施策として、多くの企業が実施している取り組みです。皆さん、加工に加えて組立までやれるようにして社内の付加価値を増やしたと、どうどうと説明されます。では、それで利益が増えたのか聞いてみると、大抵、増えてないとの回答が返ってきます。むしろ、人員増や管理増で赤字になっているケースが多いのが実態です。まさに、これは単純な工程増が付加価値向上にはなっていない証拠です。

なぜこんなことになるのかと言うと、自社の加工+他社の組立だったものを、自社の加工+自社の組立にしただけで、自動的に付加価値が上がると思っている企業が非常に多いからです。実際には、そんなことはありません。確かに、自社の工程、売上は増えます。しかし、価格を比較すると、自社の加工+他社の組立よりも自社の加工+自社の組立の方が下がっているはずです。価格が下がる、すなわち価値が下がっているのです。これでは付加価値が上がったとは言えません。

自社の加工+自社の組立にすることで、自社の加工+他社の組立よりも、製品の価値が上って初めて付加価値が上がったと言えるのです。もっとわかりやすく単純に言うと、自社の加工+自社の組立で製造した製品が、自社の加工+他社の組立で製造した製品よりも、値段が上げられた場合、付加価値が上がったと言えるのです。

「そんな、製品の値段を上げるなんて、ありえない・・・」

そんな風に考える方には、絶対に付加価値を上げることはできません。できるのは、コストダウン(C/D)だけです。そして、多くの製造業の経営者が、工程を増やせば、あるいは内製化すれば、単純にC/Dになると考えています。工程を移しただけで単純にC/Dになることはありません。それでもC/Dになるということは、つまり、他社よりも自社の社員を安売りしただけというケースが多いのです。輸送費、管理費、工程の技術的な違いなどが大きい場合はまだ良いですが、ただの自社の安売りをしているだけという、C/D内製化病にかかっている経営者が非常に多いのです。

自社の製品の付加価値を上げ、利益を上げるには、まず、C/D内製化病と稼働率病を治さなければなりません。

御社は、困った時にすぐに内製化の話が出ていませんか?
C/Dによって、付加価値を上げられたと、真顔で話してはいませんか?