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コラム第208話:技術とビジネスが切っても切り離せない時代の技術者と経営者のあり方


「先生、ここはあえて外部を使おうと思います。」
どこを社内でやり、どこを外部に出すか、開発の進め方の戦略を開発リーダーA氏と確認していた時の会話です。

A氏が外部に出すと考えたのは、A氏の会社が得意とする部分で、従来なら考えるまでも無く社内でやっていたはずの部分です。それをあえて外部に出すと言うのです。しかし、決して頭がおかしくなったわけではありません。そこには、ちゃんとした考えがあり、戦略があります。A氏は、確信を持って、ここは外部に、と判断したのです。

詳しくは書けませんが、そこを外部に出すことは、開発のスピードを劇的に上げるだけではなく、収益化とその後のビジネス展開もやりやすくなる極めて合理的で優れた判断です。A氏は、これを自分で考えられるようになりました。

なぜ、A氏がこれだけの判断ができるようになったのか?

それは、A氏が、技術だけではなくビジネス全体のことを考えるようになったからです。A氏は、もともとは技術者で、従来は自分が専門とする技術のことだけを考えていました。自分の専門技術に関わらないことには、関心を示していませんでした。これでは、当然、技術開発の一部を戦略的に外部に出すという考えは出てきません。出てこないどころか、考えることすらありません。

これがどうして変わったのか?

技術者は、どうしても専門家として自分の専門分野のみに関心を持ちがちです。技術を高めるためには、専門に集中し、知見を深め、真理を追究していくことが重要だからです。このこと自体は良いことなのですが、副作用として、隣や横のことを知らないという事態が生じます。これでは、技術を製品としてまとめることはできません。製品としてまとめためには、どうしても複数の技術や知見を融合していかなければならないからです。

さらに、今は、技術とビジネスが互いに深く影響しあっています。その影響度は増大しており、技術を知らなければ、どんどんビジネスができなくなっています。これからのビジネスには技術者が欠かせなくなっているのです。一方で、技術だけではビジネスにはなりません。技術とビジネスは互いに影響し合い、切っても切り離せない存在になっています。そのため、技術者には、ビジネスを知ることが、経営者には、技術を知ることが必要不可欠になっています。

ところが、先に書いたように、技術者は自分の専門に集中する傾向にあります。ビジネスには関心がありません。そのため、経営者に自分の技術を分かりやすく解説してくれることもありません。その必要性を感じていないからです。その結果、技術者は技術を深めていてもビジネスを知らず、経営者は技術を知りたくてもよく分からない、といった事態が生じているのです。これでは、技術とビジネスが分断され、これからの時代に成功することはできません。

これを解決していくためには、技術者に、自分の専門以外の隣の技術に関心を持たせるだけでなく、さらに、製品全体やビジネス全体に関心を持たせなければなりません。しかし、横を見ろ、全体に関心を持て、といくら経営者から声をかけてもなかなかそうはなりません。隣や近くの横を少し見ることはあっても、そこからはあまり広がっていきません。例えるなら、深い森の中で、周りをよく見ろと言われて、自分の周囲の木々は見るようになったという状態です。一つの木しか見なかった人が、周囲の数本の木を見るようになった、そんな状態です。これでは、深い森の全体、言うなればビジネス全体を見るようにはなれません。

全体を見るためには、どうすべきか?

それは、視点を上げることです。

森の中に居て周りを見ようとしても、隣か隣の隣くらいしか見ることはできません。全体を見るためには、森を高いところから俯瞰することです。視点を上げないといけないのです。逆に、視点を上げると、一つ一つの木々から意識が離れ、自然に全体に目が行くようになります。全体が見えると、自然に全体のことを考えるようになるのです。

冒頭のA氏は、まさにこの視点を変えたのです。もともと自分の専門分野だけを見ていたA氏は、あることをきっかけに、その視点が大きく上がり、全体を見て考えるようになりました。全体のことを考えた結果、社内で自分たちがやるべきことは何か、外部を使うべき部分はどこか、これを自分の頭で考えられるようになったのです。そして、その考えをきちんとわかるように経営者に説明します。すると、技術者と経営者の相互理解が高いレベルで進みます。その効果は絶大です。

御社は、技術者の視点を上げていますか?
経営者が技術を意識し、技術者がビジネスを意識し、相互に議論していますか?