コラム第192話:現状に不満を抱えていながら変えられない企業経営者と、バンジージャンプをジャンプ台から飛び出せない人の共通点

「当社にできるでしょうか?」
現状を変えるために「開発に取り組みたい」と相談に来られたある企業経営者の方が、一通り自社のこれまでの歩みを説明された後、こう質問されました。
「開発をやらなければ」と思いつつも、「本当にできるだろうか」という不安を抱えている、そんな様子です。
このご質問に対して、ストレートに厳しい回答をするならば、
「できないかもしれないとしたら、あきらめるのですか?」
という言い方になります。
「なんて嫌な言い方をするんだ! あきらめたくはない。しかし、やってみたもののできない結果に終わりたくないに決まっているだろ!」
きっと、そう思われたのではないでしょうか。
では、次の言い方をしたらどうでしょうか。
「成功している企業は、できるという100%の確証があったから取り組み、成功したのでしょうか?」
例外はあるかもしれませんが、多くのケースで確証はなかったはずです。
では、確証の無い中で、彼らはなぜ取り組むことができたのでしょうか?
彼らも確証はないのですから、不安なはずです。誰も失敗で終わりたくなんかありません。やるからには成功したいはずです。条件は変わりません。
「いや、条件が違う。彼らは成功する実力が備わっている。成功したことが無い自分達とは違う」そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、最初は同じだったはずです。確かに何度も成功している企業は、実力が違うかもしれません。しかし、そういった企業も、最初の一歩、最初の開発の時は、同じ条件だったはずです。ここで取り上げているのは、この最初の一歩を踏み出すか、踏み出さないかの違いです。
何度も成功している企業でも、最初は、実力も実績も無く、不安だったはずです。それでも最初の一歩を踏み出したのです。しかも、その中の多くは、最初は失敗したはずです。やれば必ず成功するわけではないからです。それでも、彼らは挑戦し、たとえ失敗してもあきらめずに再挑戦しているのです。そうして成功を手に入れています。
こういった企業と、最初の一歩を踏み出せない企業とでは、一体、何が違うのでしょうか?
それは、自社を信じられるかどうか、です。
これを「自信」と言います。
「最初から自信のある企業なんてない」そんな声が聞こえてきそうです。
そうかもしれません。しかし、できると信じるだけで良いのです。根拠の無い自信、大いに結構です。成功する企業でも最初は大なり小なり根拠の無い自信を頼りに挑戦しています。
実績や、他社と比較した実力など、必ずしも必要ではないのです。自社ならやれる、自分達ならできる、そう信じるだけです。
逆に、不安を打ち消そうと、できる根拠を探そうとすると、不安から抜け出せなくなります。なぜかと言うと、どんなに根拠を見つけても新たな不安材料が見つかってしまうからです。
「そんなばかな!」そう思われるかもしれません。
しかし、ここに、最初の一歩を踏み出す企業が気づき、踏み出せない企業が気づけていない、両社を決定的に分ける事実があります。
それは、「新しい開発をするのに、できる根拠をいくら見つけても決して不安は無くならない。踏み出すためには、結局、どこかで、自社ならできると信じるしかない。」という事実です。
踏み出す企業は、どこかでこのことに、気づいています。
踏み出せない企業は、不安を完全に無くそうと、どこかに不安材料が残っていないか探し続けることをします。その結果、不安材料が尽きることはありません。当然です。不安は決して無くならないからです。
必ず成し遂げられると自社を信じること。
信じた企業だけが、踏み出せるのです。
もちろん、最初から自信のある企業なんてありません。最初は、できることから小さな成功を積み重ねていくことです。そのためには、一つ一つ正しいステップを正しい順番できざんでいくことが大切です。そうすることで、気づいた時には、最初は想像もしなかった高みへと自社を導くことができます。
御社は、自社を信じることができていますか?
どんなに安全だと説明されても、ジャンプ台から飛び出すのをためらってはいませんか?