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コラム第138話:下を向く企業と、上を向く企業の違い


お盆休み中も開発テーマを考えていたA社。出てきた開発テーマのレベルがグーンと上がりました。思わず「おっ!」と声が漏れるくらいに期待の持てるテーマです。提案した開発リーダーの目は、希望に輝いています。

そんなA社も最初からこうだったわけではありません。最初、社員から出てくるテーマは、「それは、ちょっと・・・」と言わざるを得ない案ばかりでした。他社が既にやっていることや自社の取り組みの小改善といった、今からそれに取り組んでも儲けを望めないテーマばかりでした。

このように他社が既にやっているようなテーマ案ばかりが出てきた場合、多くの社長はこう言います。
「それではいけない、他社と差別化しないと・・・もっと他社よりすごいことを・・・」

これを聞いた社員は、次のように考えます。
「他社を上回るように、これまで進めてきた性能向上をもっと加速させるしかない・・・」
そして、それを社長に提案します。

すると、社長は求めます。
「もっと速く、もっと向上を」

まじめな社員は、これまで以上に必死に性能向上の開発に取り組みます。ところが他社も必死です。その結果、互いに差別化できません。社員はどんどん疲弊していきます。望んだ他社との差別化はいつまでもできずに、社長は「向上が足りない、遅い」とずっと不満を持ち続けることになります。

社員は影でこう言います。
「うちの社長は、無茶なことばかり要求する」

A社も、そんな状況でした。

この状況から抜け出すために、まず、社長が気づかなければならないことがあります。
それは、「社員は、これまでの延長線上でしか、物事を考えられない」ということです。

よほど優秀な社員や変わり者の社員は別ですが、普通の社員は、自分たちがこれまで取り組んできた延長線上でしか、物事を考えることができません。そんな社員に対して、「もっと、もっと」と求めれば、従来の延長線をどんどん伸ばして、もっと向上させるしかない、と考えてしまいます。

ところが、これは、誰しもが考えることです。当然、他社もそう考え、取り組んでいます。その結果、他社と差別化しようとすると、必然的に他社とのスピード競争になります。他社より早く開発するしかなくなります。これは、しんどい戦いです。しかも、たとえ勝っても、すぐに追いつかれてしまいます。そのため、常に開発を続けなければならなくなります。

こうして終わりなき延長線上での戦いを繰り広げることになり、開発者は、ますます延長線上から抜け出せなくなります。そして、社長は、いつまで経っても他社との差別化ができず、儲からない現状を嘆くことになります。社員は必死に頑張っているにも関わらず・・・

冒頭のA社は、ついにこの状況から抜け出しました。新しく出てきたテーマは、明らかに延長線上ではありません。これまでには出てこなかったテーマです。

A社が変わるきっかけとなったことがあります。
それは、「延長線から抜け出すための新しい視点」を与えたことです。

延長線から抜け出すために必要なこと、それは、新しい視点を与え、社員の視点を変えることです。A社の社員は、新しい視点を与えられ、提案テーマのレベルが大きく上がりました。そして、A社社員は、自分たちの提案のレベルが上がったことを実感しています。そのことが社員の意識をさらに引き上げています。

この視点を変えるというのは、簡単そうに思えますが、実は難しいことです。社員たちだけでは、まず、視点は変えられません。新しい視点は、経営者が持ち込み、社員に示す必要があるのです。

一方で、いたずらに視点を変えようとすると、かえって視点が定まらず、社員がさまよい始めるということが起こります。これを防ぐためには、経営者がきちんと定まった新しい視点を与えることが重要です。

御社は、社員に新しい視点を適切に与えていますか?
視点を与えずに、視点が変わらないことを嘆いてはいませんか?