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コラム第125話_受注と技術公開を引き換えにする危うさ


「海外の大手企業からの工場見学依頼をOKしたら、役員を含め大勢の社員が見学に来ました。大手なのにずいぶん勉強熱心な企業でとても驚きました」
先日、会話したある経営者の方の体験談です。

この見学をOKした企業は、ある製造加工に特化した日本の中小企業です。一方、大挙して見学に来た海外の企業は、売り上げ規模が数十兆円を超える誰もが知っている世界の大企業です。

一体何が起こったのでしょうか?
この話からは、少なくとも次の二つのことが容易に想像できます。

一つは、「海外企業にとって極めて価値が高い、是が非でも欲しい技術が、この日本企業の現場にはある」ということです。

もう一つは、「この日本企業は、そのことに気づいていない」ということです。

そして、これは、日本の企業、中でも中小企業では、非常によくあることなのです。自社の技術の価値に気づけていない。だから、平気で公開する。タダで見せてしまう。日常的にこういうことが平気で起こっています。

売り上げ規模数十兆円におよぶ企業が、役員を含め大挙して訪れたということは、この日本企業の現場には、数十から数百億、場合によってはそれ以上の価値はある、そういった技術がある、ということです。ところが、当の日本企業は、全くその価値に気づいていません。気づいていないから、タダで公開して、相手の反応の高さに驚いてしまっているのです。見せてから気づいても、時すでに遅し、です。見なかったことにはできません。非常に残念なことですが、日本の製造業の現場では、日々、似たようなことが繰り返されています。

ではなぜ、これらの企業は、それほどの価値がある技術に気づけないのでしょうか?

そこには、大きく二つの要因が関係しています。

一つは、「技術を見せて、認めてもらって受注を取る」という受け身型の経営を長らく続けてきたという点です。

自社の加工設備や加工技術、品質管理などを顧客である大手企業に開示して、認めてもらって、選んでもらって受注を取る方法をずっと続けてきたために、ひどい場合は、顧客から頼まれたら何も隠さずに見せるものと思い込んでしまっています。たとえ経営者はそうは思っていなくても、現場の社員はそう思ってしまっています。

もう一つは、「お客さん側からの目線で考えていない」という点です。

多くの企業では、自分たちが大切だと思っている技術については、開示せずに守ろうとしています。しかし、肝心の顧客が欲しいと思っている、貴重だと感じている技術については、特に大切だと思っていないケースがあるのです。自社が大切だと思っている技術と、顧客が欲しい技術がズレてしまっている場合です。この場合も結果は同じで、本当に守るべき技術は公開されてしまいます。実は、こちらのケースの方が、現場では、より頻繁に発生しています。

顧客が本当に欲しいと思っている、内製化や転注しようとしたときに本当に困る技術は、華やかな新技術や難解な開発技術よりも、一見何でもない、自社では昔から当たり前になっている現場の技術だったりするのです。ところが、自分たちから見れば当たり前の技術なので、そんな価値があるとは思っていません。ですから、平気で見せてしまいます。原因は、お客さん側からの目線で考えていないことにあります。

「そんなことを言っても、お客さんから求められたら、開示するしかない」そんな声が聞こえてきそうです。

しかし、ここは、踏ん張らなければならないところです。少子高齢化が進む日本の中で生産性を高めていくためには、技術をBlack Box化し、その価値を高めていくしかありません。技術の流出は、国家間の貿易戦争になるほど大きな問題です。国家として、技術が、今後ますます重要になることがわかっているから、相当なリスクを取ってまで国家単位で争っているのです。

これから、どんどん価値を増していく、そんな虎の子の技術をタダで公開していては、世界の中で戦っていけません。次代を制する企業は、顧客目線で技術をきちんとマネジメントできる企業です。

もちろん、すべてをクローズにしろと言っているわけではありません。大切なことは、顧客側の目線から考えて、オープンにする部分とクローズにする部分を戦略的に使い分けることです。

そして、この顧客に対してクローズにする技術こそ、他社にまねされない開発をやっていく上で、その中核に据えるべき技術なのです。

御社では、技術を、そして技術者を、顧客目線できちんとマネジメントしていますか?