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コラム第105話:お客さんが欲しいのは、車ではなく、移動でもなく・・・


某IT企業が始めたゼロ円タクシーのサービス。タクシー車内で広告が流れる代わりに、移動料金が無料になるというサービスです。話題性もあり、なかなかの人気で関心を持たれている人も多いのではないでしょうか。この無料の移動サービスの登場は、車が売れなくなり、自動車業界を大きく変える、そう思った人も多いと思います。

時代は、所有から利用へ。人々は、車を所有しなくなり、移動サービスを利用するようになる。そして、情報通信技術の発達や自動運転技術の進化がこれを支える。人々が欲しいのは、車では無く、移動という発想です。

もちろん、今すぐにゼロ円タクシーが普及していくことはありません。今は話題性という宣伝効果があるので良いですが、広告タクシーの数と広告主が増えてくると、ゼロ円になるほどの広告費を出すことは割に合わなくなります。それに、広告によってゼロ円移動が可能になるのであれば、電車はとっくに無料になっているはずですが、実際には、乗客がスマホばかり見るので、電車の中吊り広告も減っているというのが、現実です。

ですが、移動コストの低減手段は、広告だけでは無く、宿泊を兼ねた移動ホテルや、仕事場や会議室あるいは娯楽を兼ねた移動スペースとするなど、移動+アルファでトータルコストを抑える手段がたくさん考えられます。実際に登場するでしょう。そして、これらのサービスの登場が、車を所有しなくても同等の移動手段は得られるというインパクトを人々に与えるのは、間違いありません。そうなった場合、自動車業界に与えるインパクトは、非常に大きいものがあります。

さらに、この人々が本当に欲しいものは・・・という発想には、その先があります。

それは、人々が欲しいものは、車ではなく、移動・・・でもなく、真に欲しいものは、「体験」であるという発想です。

ハンドルを握ってアクセルを踏んで操るといった、走る喜びを感じる体験や、走行途中の風景を感じたり、行った先での様々な楽しい体験。人々が真に欲しいのは、これらの体験であるというものです。人々が欲しいのは、この体験だから、皆、車の所有を続けるだろう、そう考える人もいると思います。

ところが、ここにもその欲求に答えようとする新しい技術が登場してきています。それは、VR(バーチャルリアリティ)の技術です。VR技術が進化していけば、人々はそこから様々な体験が得られる。既に一部の旅行業者では、VRによる旅行体験のサービスがスタートしようとしています。この進化したVR技術があれば、移動さえも必要なくなる。なぜなら、人々が真に欲しいのは、体験だからという発想です。

いかがでしょうか?

このように、これらの発想は、VRさえあれば、他には何も要らないという結論に行き着きます。そして、この話は車に限りません。様々な商品に当てはまります。

と、ここまで書いてきて、皆さんに質問です。

VR技術が進んできたとき、本当に人々は全員、移動を止めるでしょうか?
移動サービスが広く安く普及したとき、人々はみんな、車の所有を止めるでしょうか?

もちろん、答えは、NO です。
少なくとも、全員が止めることは無いでしょう。

車を所有する人、車は所有せずに移動サービスを利用する人、バーチャルで満足する人、あるいは、その時々で使い分ける人、これらに分かれてくるはずです。もちろん、主流派は変わっていく可能性があります。ただし、どれか一つに置き換わるのではなく、選択肢が多様化していくことを忘れてはいけません。なぜなら、本来、人々が欲しいものは、一人一人異なるものだからです。

そして、この多様化、特にその非主流にこそ、中小企業にとってのチャンスがあります。たとえ、主流では無くても、お客さんに欲求がある限り、それは残ります。そして、そこには希少価値が生まれます。そこにこそ、中小企業が儲けるチャンスが存在します。

逆に、何が主流になるかは、とても読みづらい時代になっており、主流を追いかけざるを得ない大企業には辛い時代になっています。それにも関わらず、大企業に盲目的について行くのは、大変危険です。本来、中小企業に求められていることは、主流派の大企業を支えることでは無く、人々の多様なニーズに答えることにあるはずです。

主流の変化にばかり目を奪われるのではなく、これからのニーズの多様化にもしっかりと目を向けていきましょう。

大切なことは、流れを読みつつも、流されないことです。