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コラム第100話: 何でも自社でやろうとするから自社で何もできなくなる


  「おかげ様で次の基盤技術を手に入れることができました」先日お会いしたクライアントからの今後が楽しみな一言です。 このかたの企業は、客先からの要望に応じて、ある特定分野の製品のみをずっと製造し続けてきたものづくり企業です。ところが、年々その製品の需要が落ち込んでいました。そんな状況に危機感を抱かれた社長が、弊社の門を叩かれ、コンサルティングを実施することになったのですが、始めるとすぐに、その企業の今後の事業展開にとって欠かせない、ある技術が浮かび上がりました。早速、その技術を使った製品の開発を提案したのですが・・・ 返ってきたその企業の反応は、「絶対に無理」でした。理由は、「自分達はこれまで〇〇という技術しかやってこなかったので、それしかできない。その技術は聞いたことはあるが、扱ったことがないし、中身もわからず、理解もできない。なので、自分達に開発できるわけがない」というものでした。 実は、低収益に苦しむ製造企業の共通点がここに現れています。低収益企業の経営者が語る共通の言葉。それは、「うちの会社は、これしかできない」というものです。 長年、特定の製造技術を磨いて競争力を保って戦ってきた。そして、生き残ってきたという強い自負がある。ところが、収益はどんどん落ち込み、自信が失われてしまった。その結果出てきた言葉が、(このままでは苦しいのはわかっているけど)「うちはこれしかできないから」という、自負と自信喪失が同居したような複雑な表現になって表れてきます。 そんな企業に何としても気付いてほしい極めて単純なことがあります。皆、そこに気づかずに自ら落とし穴にはまったまま抜け出せずにいることです。 ものづくり企業がこぞってハマる落とし穴。 それは、「自前主義」です。 少し前を読み返してみて下さい。先の企業に対しての提案は、ある技術を使った製品の開発です。「使った」であり、「その技術を自社でやれるように」とは、一言も言っていません(書いていません)。その時点でやれないのは承知の上で提案しています。それにも関わらず、「そんなのできない」「うちの会社は、これしかできないから」と反応してしまうのは、無意識に「必要な技術は、自社でやらなければならない」という思い込みが働いているのです。世の低収益に苦しむ製造企業の多くは、この思い込みにとらわれてしまっています。 なぜ、いきなりすべての技術を自社でやろうと考えるのでしょうか?それは、無理ですし、無茶です。また、その必要もありません。前回のコラムにも書きましたが、技術は道具、使うものです。必要な技術が自社に無ければ手に入れて使えば良い、それだけのことです。 冒頭の企業とは、知恵を絞り、自社でやることなく、その新たな技術を使った商品を短期間で開発することに成功しました。そして、その結果として、次の基盤技術を手に入れることにも成功しました。最初、この企業自身が「絶対に無理」と言っていたことが、短期間で実現できたのです。自前にこだわらずに知恵を絞れば、可能性は大いに広がります。逆に「自前主義」にこだわり過ぎれば、「これしかできない」という世界に閉じこもることになります。 誤解しないでほしいのは、何も自前のすべてが悪いとは言っているわけではありません。当然、自前でやるべきこともあります。最大の問題は、自前でやるべきことと、そうではないことを分ける明確な基準を持っていないことです。その結果、特にものづくり企業では、「何でも自前でやらなければならない」と思い込んでしまっているケースが非常に多くあります。 すべてにおいて自前主義にこだわり、自社の可能性を制限するか、 自前主義へのこだわりを捨てて、自社の可能性を広げるか、 御社は、どちらを選択しますか?